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かぞくのわっか
妹ができたのは、あと数日で小学四年生になるという頃だった。。
パパとママが二人で出かけて、すぐに帰ってきた。そのとき連れてきたのが、妹となる子だった。
小さな女の子だった。小さな子の年代ってよくわからないけど、赤ちゃんと呼んでもでもいいくらい小さく見えた。でも、私の知っている小さな女の子とちょっと違う。
手足はガリガリで、枯れてしまった枝みたい。左目の上には、大きくて赤黒い痣。目はどんよりしていて、抱っこしたズタボロで薄汚い黄色っぽいタオルケットを指でそわそわいじっている。なんだか不気味で、すごく怖くて、そして、かわいそうな子だって感じた。私の知っている小さな女の子って、もっと無邪気で、キラキラしていて、丸っこいのに、この子はどうしてこんななんだろう。
パパとママは、その子を妹だと言った。こんなに見てくれの子でも、この子は私の妹。だから私はお姉ちゃんらしく、なるべく優しく声をかけたつもりだった。
「こんにちは」
それなのに、その子はびくっと体全部を震わせて、うつむいたっきり何も言わない。聞こえなかったのかと思ってもう一度挨拶すると、今度は泣き出してしまった。その泣き方が、またひどかった。体を激しく痙攣させながら、その場に蹲り、悲鳴みたいな泣き声を延々、延々、響かせる。耳と頭が壊れてしまいそうだった。
「ちょっとあっちに行ってて」
ママが、呆然と立ち尽くす私にそう言った。
パパは、その子のことを優しく抱きしめてやって、こっちの方を一瞬だって見やしない。
――その子は、私の妹になりにきたのではなくて、私のママとパパの子供になりにきたのだ。
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