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零れたジュースは戻らない
本当のことを話せば、ボクはいつからメアリーたちと一緒にいるのかはわからない。
ずいぶんと小さい時に彼女たちの家にやってきたんじゃないかな?
ボクがかろうじて覚えてるのは、「新しい家族が見つかってよかったね!」って誰かが頭を撫でてくれたことだけ。
だからもしかしたら、メアリーが前に読んでくれたナントカっていう本で、ナントカっていう施設から子どもを預かる人の話があったから、ボクもそうなのかも知れない。
メアリーは8歳の女の子。
とても活発な女の子で、ボクと一緒に散歩に出かけたり、かけっこしたり、ボール遊びをしたりするのが大好きだった。
でもね、少し飽きっぽくて、遊んでくれないこともたまにあったから、そんな時は、ママが代わりにボクと散歩に行ってくれたんだ。
力持ちのパパは、とても頼りになる存在。
だけど、短気なところが玉に瑕で。メアリーを追いかけてきた野良犬を銃で撃ち殺しちゃった時には本当にビックリした。
動かなくなった犬を見て可哀想だなぁって思ったけど、ボクは犬じゃなくてよかったって、ちょっと思っちゃった。
だって、人間だったら簡単に撃たれることはないからね。
みんなとの生活は、本当に、本当に楽しかったんだ。
まぁそれも、あの日までは……なんだけど……。
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