境界線

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 はらはらと広場に小雨がぱらつきだした。若い女性の飛び下り騒動に、いつもより二倍は多かった見物人も、いつまでたっても泣き叫ぶばかりで飛び下りようとしない自殺志願者に退屈しはじめた。ベーグル屋台は見切りを付け、店をたたんだ。  そして、隣の住人の間違いのない情報として、その女性は確かに若いが、それほど美人ではないことがわかると、一人去り、二人去り、夕方にはほんの数人の関係者が見守るだけとなった。  バーテンも広場を離れ、店の準備にかかった。もっとも窓だけは開けておいて、いつ飛び下りても見逃すことのないようにしておいた。  そして、突然、彼女は飛び下りた。
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