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「君は人生をやり直したいか」
明るいのか暗いのか。
白なのか黒なのか。
俺の目は開いているのか否か。
そもそも目があるのか、ないのか。
そんな曖昧な場所で、神であろう声は俺にそう告げた。
「はい」
あるかどうかもわからない口で、俺はそう答えた。
なにも、考えなかった。
物心ついた時、そんな記憶を思い出した。
その記憶をなぞるように成長していた自分に、漠然とした疑問と、気持ち悪さを感じたが、そのまま、俺は成長した。
気づけば五十路。
世界が灰色に見えだした。
日々を淡々と送る中で、なにか定められた道を、盲目で歩いているような、そんな感覚を覚えた。
外れるわけにはいかない歯車になって、世界を回しているような気分になった。
自分の価値を、確かめようとしなくなった。
全て、前の人生と同じだった。
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