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序
祈りを捧げる。
灯篭を川に流し、お母さんと一緒に手を合わせた。
お盆に現世に戻ってきていた先祖の魂が死者の国に戻る儀式。
僕はおじいちゃんの灯篭を流した。
せせらぎに委ね、ゆっくりと流れていく灯篭。
それぞれの放つ暖かな光が辺りを包み込む。
「この灯篭も流していただけませんか」
川辺で佇んでいると、ふと見知らぬおばあさんに声を掛けられた。
灯篭を手渡され、お母さんの顔を見る。
送り手がいない灯篭もあるんだ。
首を傾げながらも「流してあげたら」と促され、先ほどと同じように川に流す。
「ありがとね」
お辞儀し、おばあさんは去っていった。
灯篭はしばらく水際を漂い、やがて川の流れに沿って動き始めた。
他の灯篭と交じり合い、大きな光となる。
これだけたくさんの灯篭が一緒なら、あの灯篭も寂しくないかもな。
そんなことを思いながら、僕はぼんやりと川を眺め続けていた。
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