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「本当にそれでいいの? さっきは言わなかったけど、致死率百パーセントの芽殖孤虫みたいな寄生虫だって日本には存在するんだよ?」
「どうせ若竹さんには分からないよね」
私には何もない。
美貌も、頭脳も、一人でいられる強さも。
だから私は、これだけは手放すわけにはいかないのだ。
「……宮野さん、怖くないの?」
虫が内側から私を食い殺す。
そんな想像は、以前の私ならひどく気味悪がっただろう。
けれどもう、そんな風に感じる心もなくなった。
なぜだろう。
他人を恐れる心とともに、それ以外の私の一部も死んだのか。
「ひとりの方が、よっぽど怖いよ」
若竹さんの顔がはっきりと歪んだ。
気味悪がっているようにも見えたし、泣きそうになっているようにも見えた。
――もしかしたら、サプリになんか頼らなくても彼女と友達になれてたかもな。
しかしすぐに考え直す。
サプリを飲む前の私が、これほど気さくに彼女に話しかけられるはずもない。
これで良かった。
結局こうするしかなかったのだ。
口裂け女が人間として暮らしていくためには。
たとえ相手が、人間の皮をかぶった虫だったとしても。
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