10人が本棚に入れています
本棚に追加
だらだらと汗が出てきた。
いったい何を飲んでしまったのだろう。
私は私をこれほどまでに変えた虫について何ひとつ知らない。
名前も。
姿も。
そして、その目的も。
「新種の可能性が高いけど、もしかしたら人為的に作られたのかもしれない。どっちにしても私が読んだ寄生虫の本には載ってなかった。
生態すら分かってない以上、その劇的な精神変化が何を目的とするものなのか分からないし、今後どういう影響を及ぼすのかも分からない。
そんな生き物を飲み込むなんて、私はできない」
寒くもないのに下唇が震え始める。
得体の知れない虫というだけで気持ち悪いのに、そいつは今、私を中からちゅうちゅうと啜っているのだ。
「これを知ったのは二、三年前だから、ほかにも飲んだ子いるんじゃないかな。クラスでも、宮野さんや村重さんの変化を結構すんなり受け入れた子が多かったでしょ。単に彼女らがそういうのを気にしないタイプなのかもしれないけど、私は『それぞれの中にいる寄生虫たちが自分らの宿主を喧嘩させると生存的に不利になるから、仲良くやれるように操作した』んじゃないかなって考えてる」
確かにそうだ。
いくら社交的になったからと言って、私や村重さんの変化はあまりに唐突だった。
けれどからかわれることはなく、驚くほど順調に溶け込めた。
まさか、美香本人も友達サプリを飲んでいたのだろうか?
それともグループの主要メンバーか。
どちらにしても意外には思わない。
それほど私たちにとってコミュニケーション能力は重要だからだ。
最初のコメントを投稿しよう!