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口裂け女みたい、と美香が笑った。
T中学校二年四組には二つの女子グループがあった。敵対しているわけではないが、毛色が違う。
どちらかに所属しなければいけないような空気を感じた私は、長いものに巻かれるうち美香グループの末席に収まることになった。
休み時間になると、彼女の周りを七人の女子生徒が二重になって取り囲む。
私はその輪の後列で、同じく後列レベルの女子と作り笑いを浮かべていた。
今さらもう一つのグループに入ることなどできないし、美香が私に話しかけることなど稀だ。
だから、不意に彼女が私を見てこう言ったとき、心臓が跳ね上がった。
「ねー、宮野さんっていつもマスク付けてるよね」
「えっ? あ、うん」
「なんで?」
「あっあの……お母さんがカゼ流行ってるから付けていけって、それで」
「えー、口裂け女みたい」
その一言で、私の話題はバッサリと終了させられた。
取り巻きたちも美香に倣い、私を鼻で笑ったのちに背中を向ける。
面白くないテレビでも見終わったように。
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