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アイス屋に着き、二人用のテーブル席に着く。
他愛ない会話をしたが、正直楽しかった。
家族と話しているかのようにリラックスした会話ができるのだ。
特別面白いネタがなくても、彼女との会話にはホッとするような安らぎがあった。
「村重さん、なんか変わったよね」
だから私は、ずっと口に出そうか迷っていた言葉が言えた。
彼女は身構えるどころか、笑い話のように同意する。
「でしょー? 自分でもびっくりするくらいコミュ障だったもん」
「キッカケとかって、あるの?」
私がずっと欲しかった答えだ。
気負う私とは裏腹に、軽い調子で村重さんが返す。
「あるよー、今日はそのために宮野さん誘ったってとこもあるくらいだし」
「え?」
「だって宮野さんも、私みたいに変わりたいんでしょ?」
思わず喉が鳴った。
変わりたい。変わりたい。
ずっと遠い夢のように思っていたけれど、そんな方法があるのならば何が何でも縋りつきたい。
「私でも……変われる?」
「変われるよー、だって私がここまで変わったんだよ? 生き証人って感じ」
「どうすればいいの?」
「教えてあげたいけど、最初に約束してほしいんだよね。この話、私たちみたいな人間以外にはしないって」
「つまり、コミュ障以外にはバラさないでってこと?」
「うん。でも、むしろ困ってる人には教えてあげてほしいんだよね。実際私はそれですっごく助かったから」
「分かった。絶対約束する」
前のめりになる私に、村重さんが優しく微笑みかける。
「……『友達サプリ』って知ってる?」
私は首を振った。
「私、それ飲んだの。そしたらこうなった」
彼女はそこで言葉を切った。
信じられない。
どんなすごい訓練法があるかと期待していたのに、一言で会話が終わったのだ。
――もしかして、からかってる?
頭に血が上りかける。
しかし、にこにこと人の好さそうな笑みを浮かべる彼女からは悪意が感じられない。
「あー信じられないよね、分かる分かる。私もそうだったもん、アレ飲むまではさ」
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