友達サプリ

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「もっとちゃんと教えて!」 「ちゃんとって言われても本当なんだよ。薬を飲むだけで変われるの。ちょっと前からひそかに流通してるらしいんだけど、たまたま新宿のキャバで働いてる従姉妹に教えて貰ってさ。 あ、従姉妹はあんまり人見知りしない方だから飲んでないらしいんだけど」  背中をゆっくりと背もたれに預ける。  まず疑ったのはドラッグだった。 覚せい剤のような違法薬物で、単に精神を高揚させているだけだったのかと。  しかし、そんな心中を察したかのように彼女は胸の前で手を振った。 「あ、危ない麻薬とかじゃないからね? 私も言ってて怪しいなあって思うんだけど、ほんと大丈夫だから」 「なんで言い切れるの?」  薬物を売ろうとする人間が「危険です」と正直に言うわけがない。 「だって、このサプリ一回飲むだけで良いんだよ。ああいう危ないクスリって、最初は一度だけって思って手を出したらやめられなくなるんでしょ?」 「多分……」 「友達サプリを飲んでから一か月経ったけど、私あれからずっと飲んでないもん。ストレス感じることがなくなった分、前よりむしろ健康になった感じ」 「……ずっとサプリを飲んでないってこと、証明できたりする?」 「そうだねー、私と一か月一緒に暮らしてみる?」  笑顔でこんな軽口を叩くなんて、以前の彼女からは想像できない。  一度飲むだけで効く、なんてあり得るのだろうか。 もしこれが違法薬物で、彼女が嘘をついているとするなら、今ごろはそこそこの金額をドラッグに費やしたはずだ。 バイトができる高校生ならまだしも、中学生がそれほどの金を捻出できるのか。 「あ、別に買わせたいわけじゃないから誤解しないでね。私にとって衝撃的で、つい誰かに聞いてほしかっただけ。それに結構高いしさ」 「え……高いの?」 「うん。従姉妹から買ったときは十万円だった」 「十万!?」  思わず声が大きくなった。 高すぎる。 ドラッグなら、最初は無料にして依存性が出てきてから金を巻き上げるパターンのはずだ。 最初から高い金額を設定すると誰も手を出さないので、中毒者が増やせず儲けられない。  にもかかわらず、最初から強気の値段設定で行くということは…… 儲ける気がないのか、最初の一回しか儲けるときがないのか、だ。
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