友達サプリ

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「村重さんは十万払ったの?」 「払ったよ、初めて親に内緒で郵便局に行って引き出したの。私の場合は従姉妹が『本当に効いたって思ってからでいいよ』って言ってくれたから、後払いだけど」 「……本当に、一回で効くんだ?」 「うん」  即答され、言葉に詰まる。  このまま見送るべきなのか。 怪しいものには手を出さず、今まで通りの日常を送るのか。  ――また、地獄みたいな教室で我慢し続けなきゃいけないの?  あの感覚を思い出す。  同類だと思っていた村重さんの突然の逆転劇。 特別仲のいい子もできず、カーストの最下で我慢し続けるしかない日々。 若竹さんのように一匹狼で生きていく根性など、私にはない。  ――そんな私に、失うものなんてあるんだろうか。 「買う」  制服のスカートを握りしめ、顔を上げる。 「買わせて。お金、必ず払うから」 「え? でも今日持ってきてないや」  肩透かしを食らって困惑する。 本当に、彼女は売りつけるつもりで私を誘ったのではなかったのか。 「んじゃ従姉妹に頼んでみるね。まだ持ってたらの話だけど」 「お願い……どんだけ時間かかっても良いから」 「うん」  嬉しそうにうなずき、頭を掻く。 「実を言うと、結構勇気要ったんだー。サプリでこうなったことバラされたり、怪しいもの売りつける奴って言いふらされたりするんじゃないかって思ってさ。 でも前に……私がサプリ飲む前に、何回か宮野さんが話しかけてくれたとき、すっごく嬉しくて。私とおんなじで人見知りっぽいから、なんか力になれたらなって」 「……そうだったんだ」  照れたように笑う彼女が、以前の姿とオーバーラップした。 不思議なことにそれだけで、私の中の猜疑心は霧が晴れるように消えうせた。  数日後、私は十万と引き換えに一粒のサプリを飲んだ。
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