友達サプリ

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「おはよう」   二日ぶりに私は登校した。 教室に入るなり、ほかの女子と話していた村重さんが声を掛けてくる。 「身体大丈夫ー?」 「うん、ちょっとカゼひいちゃって」  私に近寄ってきた彼女が耳元で囁く。 「ココロの好転反応だよ」  サプリを買ったときに聞かされていた。 飲んだあと軽い風邪のような症状が出るが、それは効いている証拠で、治ったあとに必ず効果が出始めるのだと。 「そうだね」  言いながら笑いをかみ殺す。 やっぱり村重さんは正しかった。 私は今、それを身をもって感じている。  底抜けの解放感と爽快感。 私のことを誰がどう思おうが、心底どうでも良い。 友達がいないからなんだというのだ。 これから会話を重ねて友達になればいいのだし、クラス以外にだって人は山ほどいる。 これからの友達は私の周りにあふれていたのだ。  ――なんで私、わざわざマスクしてたんだろ。  思い返せば確かに口裂け女のようだ。 コミュ障の上に悪目立ちしていては仕方ない。 前はチキンだったなあと笑い飛ばせる程度には、私は変われた。  この変化はクラスメイトに対してだけには留まらない。 その日の英語で、私は気が付くと黒板に向かう先生の後ろ姿に声を掛けていた。 「そこSじゃなくてCだと思います」  静かな教室に私の声だけが響いた。 にもかかわらず、リビングで交わす家族との会話程度にしか感じない。 数人がぎょっとした顔で振り向いたが、平常心が乱れることはなかった。  休み時間、今まで通り美香を取り巻く輪の中に入る。 やはり後列だったけれど、負い目はみじんもない。 近くにいる子に話しかけ、他愛ない会話を楽しんでいると、いつの間にか村重さんも加わる。  授業開始のチャイムが鳴って、初めて気が付いた。 休み時間の無駄話は、こんなに楽しいものだったのかと。
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