ヘレン

殻にひびが入る

『いつかはこの繰り返しを終わらせなければいけないと思った。いつか２人は打ち解けるべきだと思った。今世こそはと思い生まれ変わった』
『繰り返しを終わらせるなんて事、出来るの？』
『空ちゃんが生まれる前に立てた計画書は完璧だよ。その通りにやればいいだけだよ』
『計画書なんて覚えて無い』
『そうなると思った空ちゃんは、計画書に僕の名前を書いておいた』
『猿番長さんの？』
『うん』
『じゃ教えてください』

『見る、聞く、話す』
『見えてる、聞こえてる、話している』
『見えてる、聞こえてるは受動態だ。もっと能動的に、見る！　聞く！　話す！　see じゃなくてlookだよ。学校で習ったよね、女子中学生』
『中学生って事も分かっちゃうんだ』

　今まで大人のふりをしていたカラも、すっかり本来の14歳に戻っていた。

『空ちゃんは今、暗い殻の中にいる。見えてるつもりでも本当の姿は見えていない。殻をぶち破って、外に出るんだ。明るい光で見ると違って見えるかもしれないよ。
発見を楽しんでごらん。世の中の景色を味わってごらん。世界は広いよ。知らない事だらけだ。生きている間にはとても全部は見きれない。
だから生まれ変わるんだ。
生まれ変わって、知らない事を知る。とても楽しいよ。
新しい自分を発見してごらん』

　カラはスマホを置き、部屋から出た。