乗り換え

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キシモトの仕事は人型情報端末の販売である。
人型情報端末とは、iBody（アイボディ）とも呼ばれる人の手で造られた人体のことだ。人工的に増殖させた細胞の塊に半導体をはじめとする機械部品を融合させた、いわば技術進歩によって手に入れた人類の新たなカラダ。それが iBodyだ。パソコンの機能は携帯電話、時計、メガネ、コンタクトレンズへと移植され、徐々に人体との距離を縮めていたが、ついにそれが人類との一体化を果たしたというわけだ。
そして、iBodyが世に出始めたほぼ同時期に、人類は人間の”魂”とも言える要素、つまり個々人を個々人たらしめるために必要な記憶や人格・嗜好性といったものを脳から取り出す技術を手に入れていた。この技術により人類は古い身体を捨て、新品のカラダへと乗り換えることが可能になったのである。
そうして生まれたのが人型情報端末販売員という職業だった。

「いらっしゃいませ」
自動ドアの向こう側に人影が見えると、キシモトはそちらに向かって最も心地よく感じていただけるであろう口角で微笑みを投げかけた。