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「それから……新しいサービスとして、自動的に記憶をクラウドに飛ばすものもあるのですが、いかがいたしましょう?」
「クラウドですか?」
男性が「大丈夫」以外の言葉を発したのは、契約を取り交わすまでもうあとわずか、といったタイミングであった。
「はい。実は人格や記憶データのクラウド化が進んでおりまして、こうしたサービスを始めさせていただいております」
先ほどまでとは違う、興味がある場合の声帯の震わせ方を即座に察知したキシモトは思わずサービスの説明にも力が入る。
「1秒毎での転送が可能ですので、もしiBodyが使用不可能なほど破損してしまったとしてもすぐに新しいものへと乗り換えができます。また、従来のような記憶データの取り出し作業の必要もないので、通常の引き継ぎの手続きもよりスムーズです」
キシモトが話している時、男性の眉が少しだけ上にあがったのを彼女は見逃さなかった。
「これはいいですね。ぜひ利用したいです」
「かしこまりました。では、サービスの詳細をご説明いたしますね。クラウドサービスを利用される場合の料金プランですが、このように3つのタイプからお選びいただけまして……」
予測よりも早いOKに内心驚きながらも、キシモトはディスプレイにクラウドサービスについて詳しく書かれた資料を表示し始めた。
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