とんとんさん ニ

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とんとんさん ニ

保育園に通う娘は最近おままごと遊びが好きだ。 家にある紙コップやままごと道具を集め、ぬいぐるみをテーブルの向かいに置いて一人遊びをする。 その可愛らしさと娘の成長に私は顔をほころばせた。 「とんとん、とんとん」 包丁で何かを切っているのだろう。 「ねえ、何を作ってるの?」 「とんとんさん」 「とんとんさん?」 「うん。とんとんさんだから、私がお料理してるの」 「…とんとんしてるのはミヤちゃんじゃないの?」 「ちがうの。とんとんさん出来ないからママ、あっちいって!」 娘は苛立って私をリビングから追い出した。 とんとんさんとは何の事だろうか。 子どもの遊びを深く考えないほうがいいかと思った私は、リビングを離れて庭の掃除を始めた。 翌日の日曜日の事だった。 ミヤと行った公園で、保育園のお友達と遊んでいた時。 「とんとん、とんとん。ジュージュー」 「ごはんができましたよう。おにくですよう」 さっきまで一緒に遊んでいたはずのキョウコちゃんは、砂場でミヤがおままごとを始めると席を外した。 「あら、キョウコちゃんはミヤと遊ばないの?」 「ミヤちゃん、とんとんさんしてるから」 また、とんとんさんだった。 私はキョウコちゃんに聞いてみた。 「とんとんさんって、どんな遊びなの?」 「んー。大人にはナイショなの!」 キョウコちゃんはそう言うと、すべり台の方へ走っていった。 私はキョウコちゃんのお母さんと二人で首を傾げた。 「最近、園で流行っているんですかねえ、とんとんさん」 キョウコちゃんのお母さんは困った顔をした。 「それが、私もよく分からないんです」 一人でおままごとをするのが「とんとんさん」なんだって思っていますけど。 そんな事を言ったキョウコママは、すべり台で転んだキョウコちゃんを見ると慌ててその場を離れた。
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