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次にリョウの目が開いたのは真夜中。起こしたのはまた尿意だ。俺も歳かな、なんて溜息をつきながら、細心の注意を払ってお布団脱出作戦を決行するも、いつもより素早く、いつもより力強く、パジャマの袖ではなく手首を掴まれた。
「ひっ」
思わず情けない声が出てしまう。
「だめ」
振り返ると、いつもの寝ぼけ眼ではなく、怒りを含んだようにも見える瞳を見開いたアヤと目が合った。
「トイレぐらい行かしてえな」
困ったように笑って、宥めるつもりでアヤの髪を撫でようとした時だった。
「なんで……どうしていつも、ひとりにするの」
今にも涙が溢れそうな、怒りと縋るような視線が綯い交ぜになった、思い詰めた表情に、リョウは胸を鷲づかみにされる思いだ。
「死ぬまでひとりになんかせえへんよ。でもおしっこは行かせてもらわんとなぁ……そんな言うんやったら、ついて来る?」
手を繋いで、連れ立ってトイレへ向かう。リョウはそれまですっかり忘れていた。アヤに飲ませた例の液体のことを。
ということは、これがアヤの素直な姿?
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