素直なキミも手がかかる【逆Ver.】1

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 外の日差しの傾きから、そろそろ夕方であることに気づく。アヤが目を覚ますと、まだリョウが眠っている。これはまずいのでは。 「リョウ、もう夕方」  リョウは翌日仕事、そろそろ帰らなければいけないはずだ。 「んんん~……」  伸びをしながら、ゆっくりと瞼が開く。起き抜け視界に入る顔に、嬉しそうに微笑む。 「おはよ」 「うん、で、もう夕方」 「えっ!」  ぽやぽやしていた表情が一転、ひどく焦りだした。 「マジで?! やっば! 明日朝礼当番やのに何もスピーチ考えてないんやった!」  飛び起きるが早いか、浴室へ駆け込んだ。  五分もしないうちに戻ってきたリョウ。多分必要最低限の部所しか洗わなかったのだろう。そそくさと服を着る。 「ねえリョウ」 「んー」  返事もそこそこに、帰宅準備に忙しい。 「大阪で、一緒に暮らそうか」 「んーせやなあ……ファッ?!」  麻のスラックスに片足だけ突っ込んでいたリョウが目を丸くして奇声をあげた。転倒は持ち前の運動神経で回避。 「えっ、えっ、今、なんて」 「大阪ならいくらでも働き口探せそうだし」 「な、何を言うてるん……」 「同業種だったら大丈夫だと思うんだけど」 「な、にを、言うてんねんな! そんなん俺が好きなアヤやない! 気持ち悪いこと言うてる暇あったら試験勉強でもしとき!」  きちんとスラックスをはき終えたリョウがつかつかとアヤに歩み寄って、デコピンした。アヤの顔が歪む。 「気持ち悪い、って」  額を擦りながらアヤが言うと 「アヤの邪魔になんかなりたくないもん。それに、恩人を裏切るようなことしたらあかん」  この言われよう。得意のオカン節炸裂だ。  世話焼きで小うるさい、いつものリョウだ。  ――でも本当は、未だに臆病で不安だらけの甘えん坊だと、さっき知ったばかりだ。 「はぁ……さっきはあんなに可愛かったのに」 「何か言うた?!」 リョウは今にも噛みつきそうだ。 「いえ何も。それでは参りましょうか」  アヤはリョウに見えないようにこっそり笑って、車のキーを手にした。 【おわり】
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