221人が本棚に入れています
本棚に追加
「な、鏡見て、アヤのエロい顔映ってんで」
そんなリョウの声にはっとしてアヤが鏡を見ると、目を背けたくなるようなものが視界に飛び込んできた。全身びしょ濡れになり、乳首を弄ばれながら、だらしなく開いた口に指を突っ込まれ、物欲しそうに恍惚とした表情を浮かべる、自分の姿。みるみる耳から頬にかけて真っ赤に染まり、その光景をもう見ないでおくために眼鏡をはずして投げ捨てた。りょうはそんなアヤをあざ笑うように、後孔へぬるぬるした指を滑らせた。良い具合に解して内部をかき混ぜるように押し開き、リズミカルに抜き差しすれば、その動きに合わせてアヤの腰も動いた。
「早よ欲しそうやな……挿れてほしい?」
来るだろう、という刺激が中断され、すっかりその気だったアヤは非難の目を浴びせてくる。
「は……?」
「久しぶりに、ちゃんとおねだりして欲しいなあって」
そんな目をされても、リョウはにっこにこ笑顔である。
「この期に及んで何を……!」
「挿れて欲しいの? いらんの?」
だがよく見るとリョウの笑顔、目だけは笑っておらず、瞳の奥に見え隠れするのは、欲の塊。
「……っ、欲しい」
悔しげに、吐き捨てるようなおねだりだったが、なにぶんリョウにも余裕がなく、それでよしとした。すっかり猛りきった肉茎を後ろからあてがうと、一気に滑り込ませた。アヤは鏡に手を付いて体を支え、衝撃に耐えた。
細く骨張ったアヤの腰を支えながら、うねるような腰の動きで緩急をつけて深掘りを繰り返す。感情を抑え込む、呻きのようだったアヤの声は、次第に大胆で上ずっていき、普段から感情を出さないアヤが解放される瞬間だとリョウは思うのだった。
「アヤ、気持ちいい? こっち向いて」
「やだよ……」
「顔見られるの恥ずかしいん? こっち向いてくれんでも、鏡で見えてるねんけどな」
「っ、!」
「ちょっと、めっちゃ締めてくるやん」
「ばか」
「そんな締めたらアカン、すぐいってまう」
リョウが早いのは周知の事実。こうなったらせめてもの反撃だ、と締め付けを強くした。
「な、力抜こ?」
「どうしたの? 早く動いて」
アヤは自ら激しく腰を振り、リョウを攻め立てる。
「いや、だから、な、こんなん」
「何? 気持ち良くない?」
「いや、いい、いいっ、よすぎて、っ、あ、あぁんっ!」
アヤの反逆は大成功、リョウは自らの意志に反して早々に達してしまった。もっとゆっくりアヤの体を味わいたかったことや、何より恥ずかしさとで、リョウは穴があったら入りたい気分だ。
「……相変わらずお早いことで」
息を切らせながらアヤがにやりと笑う。
「絶対わざとやろ」
リョウは弱々しく反論するも、顔は半べそだ。
「帰ったら交代だからね」
「……ええええ……」
「俺はいってないんだから」
さすが性欲お化けの絶倫男は、旅の疲れなどは関係ないらしい。
「あんな……渡したいモンあんねんけど」
きちんとシャワーを浴び直し、ホテル備え付けのパジャマを着た後、もじもじしながらリョウが言った。
「渡したいもの?」
「うん……一応、今日って恋人の日で、プレゼントしたりするらしいやん?」
「みたいだね」
「で、俺からも……」
リョウが後ろ手に隠し持っていたものを、アヤの眼前に差し出すと、アヤは絶句した。
「これ、を、俺に……?」
細く鋭いはずのアヤの瞳が、丸くなっている。それもそのはず、リョウが差し出してきたのは、可愛らしいミニブーケ。の中に、小さなクマがいくつも鎮座している。
「こっちでのプレゼント定番らしいで。『クマ束』っていうねんて! 可愛ない?」
「いや、かわいい、けど」
躊躇いがちに受け取ると、リョウが吹きだした。
「あかん! 絵面的にあかん! いやでも支配人モードの時にも持って欲しいな!」
ヒーヒー腹を抱えて大笑いするリョウに、さすがのアヤもむっとする。
「……これが見たかったんだろ」
「あは、バレた?」
てへ、っと舌を出すリョウにアヤは呆れ顔だ。それでも。
「ありがとう。大事にする」
リョウの頬に、アヤの唇が軽く触れた。『大事にする』のはプレゼントはもちろん、それだけではないのだが、アヤは皆まで言わないし、リョウはきちんとその深意をくみ取っていた。
最初のコメントを投稿しよう!