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恋の寿命を覆せ
「アヤ、今年はプレゼント何がええ?」
「今年も何もいらないよ」
けんもほろろ、とはこういうことをいうのだろうか。ウキウキワクワクで尋ねたリョウのテンションは、アヤの怜悧な表情と声色によって切り裂かれた。
今年も何もいらない、とアヤは言ったが、何も本当に毎年プレゼントを贈っていないというわけではない。リクエストを訊いても毎回同じ答えなので、いつもリョウの独断でチョイスしたものを贈っているのだ。
付き合い始めた頃はそれこそ時期的に防寒具などの服飾小物、それらがだいたい揃ってきたら次は日が近いバレンタインと合同でちょっと高級なデートを楽しんだ年もあった。
そういえば、今年はバレンタインも特に何もしなかったっけな。
もしかして我ら、今の幸せな暮らしにあぐらをかき始めているのでは――?
そんな考えにいたり、リョウはにわかに焦りだした。
巷では『恋の寿命は三年』だなんてよく言われている。しかしアヤとリョウははじめの四年は遠距離、さらに一時期別離期間もあり、凝縮すると実質まだ二年ぐらいではないだろうか、とリョウは思っている。だがしかし、初めて出会ったころのときめきや、会いたくて会えなかったあの頃の、好きで好きでどうしようもない狂おしいような気持ちが薄れているのは認めざるを得ない。一緒に暮らせるようになって、一緒にいるのが当たり前になってきている。自覚するや、リョウはものすごく焦ってきた。これが、自分には絶対に縁がないと思っていた『マンネリ』というやつなのか?
マンネリと言えば。
プレゼントの策が尽きつつあることも大きいのかもしれない。ただでさえ物欲のないアヤ、何をあげれば喜ぶかを考えるのは難しい。付き合い始めはそれ込みで選ぶことを楽しんでいたが、そろそろあげたいものはあげ尽くした感があるし、日々一緒に買い物に行った折、必要なものがあったらその都度買っている。
決して祝うことが面倒になったのではない。アヤという人間がこの世に誕生した記念すべき日を祝いたい、生まれてきてくれたことに感謝したい、その気持ちは今だって、否、月日を重ねるごとに強くなっている。
――さて、今年はどうしたものか。
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