恋の寿命を覆せ

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 毎年毎年、ないと言っているのに訊いてくるのはどうしてなのだろう。  アヤとはいえ、毎年無碍に答えるのは心が痛まなくもない。答えた後の眉尻と視線を下げ肩を落とすしょぼんとしたリョウは可愛くはあるけれど、やはり幾ばくかの罪の意識に苛まれてしまう。  欲しい物なんてないし、必要な物なら自分で買う。だからリョウからの問いにはああ答えるしかないのだ。  そう答えても、リョウは毎年何らかのプレゼントをくれる。それはそれで、まあ、嬉しいアヤなのであるが。  そんな中、今年は初めてバレンタインデーをスルーした。リョウはアヤが甘い物が苦手なのをわかっていながら毎年チョコを贈ってくる。そして一緒に食べようとにこにこしながら大半をたいらげてしまう。ツッコミどころ満載のそんな恒例行事が、今年は華麗にスルーされたのだ。  付き合いでひとつふたつつままなくていいのはホッとするところだし、バレンタインを口実にどこかへ連れ出される面倒もなく、また翌月にやってくる厄介なお返し行事も自動的にスルーできる。本来アヤは浮かれたイベントごと全般が嫌いなので、それらの面ではバレンタインがスルーされたことに喜びすら感じているのだが。  一方で、少しだけモヤモヤする。  アヤはイベントごとが嫌いでも、リョウは大好きなのである。それはそれは前もって周到に準備して、全力で楽しもう、楽しませようと計画を立てる。その準備にかかる苦労と金はいとわない。  そのリョウが、イベントをスルーした。  シャツにこぼしたインクしみのように、モヤモヤが、少しずつ、大きくなってゆく。
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