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あともう少しで日付が変わる、アヤが帰宅したのはそんな時刻だった。
「ただいま」
「おかえり」
声は返ってきたが、いつものように玄関までの出迎えがない。やはり気まずいままなのか、とアヤは思い出す。自分の心だけは晴れたため、昨夜のことをすっかり忘れてしまっていた。リョウはまだモヤモヤしているのかもしれない。気づいた気持ちをきちんと話さないと、と部屋に入ると――
「リョウ?」
「へへ、ベタ過ぎてゴメン」
真っ赤なリボンを自身に巻き付けたリョウが部屋の真ん中でちょこんと正座していた。
「これ、自分でやったの?」
よくある『プレゼントはわ・た・し』というネタである。しかしリボンをかけられているというよりは、赤い包帯で縛り上げられていると表現した方が正しいような、力の入った巻き付けようだ。さながら『ミイラ男・赤バージョン』のようになってしまっている。
「ん……ネットで調べながらやったら思いのほかえげつないことなってもうた」
本人もここまでは意図していなかったようで、恥ずかしそうに俯いた。
「あんな、俺、昨日あれから考えてんけど……」
そこからくい、と顔を上げ、正面からアヤを見据えて話し始めるのだが、
「……ごめん、このままじゃ視覚に集中しすぎて話が入ってこない」
アヤが笑いを堪えながら話を止めたので、リョウも苦笑い。
「はは、せやな。難しい話は後にして……アヤ、お誕生日おめでとう!」
「ありがとう」
時計はちょうど午前零時、アヤの誕生日になったばかりだった。
「頭のリボン、よく似合ってる」
アヤはリョウに頬を寄せ、軽くキスをした。
「え、そうお?」
「可愛いよ」
「……そうかなあ」
照れるリョウを愛しく思いながら、背中からぴろっと出ているリボンの端をつまみ上げた。
「自分で解けるの? これ」
「どう見ても無理やろ」
「ふぅん」
アヤはあらためてまじまじとリョウの姿を様々な角度から凝視した。
「解かへんのかい」
恥ずかしくなってリョウが突っ込みを入れるが、アヤは平然と「うん」とだけ返した。
「中、何も着てないの」
ところどころ、リボンの隙間から僅かにのぞく素肌を見て、アヤが問う。
「……うん」
くいっとリボンを指にかけてずらすと、肌の露出面積が大きくなる。脚の付け根から腰骨のあたり、本来下着を着けているであろう場所をずらしてみると、リョウの言う通り素肌がお目見えした。
「ほんとだ、エロいな」
晒されている肌にじゅ、っと吸い付いた。
「ひゃんっ」
リョウが素っ頓狂な声を上げると、アヤは満足そうににんまりとして、リボンで隠れたままの股間の中心を掌で撫でた。よくあるプレゼントラッピング用のリボン特有のがさがさした質感ごしに、アヤがリョウの性器を刺激する。最初触れるか触れないかの力で上下にさするように動かしていた手は、やがて輪郭をはっきりさせた性器を握り込み、扱き出す。
「いッ、そこ、それ、きもちいい」
正座の姿勢で身動きが取れないままのリョウがもじもじと身体をくねらせながら悶えている。そのたびに真っ赤なリボンの光沢がより一層輝き、リョウの顔もだんだんリボンの色に近くなっていく。
「ここ、こんなになってる」
アヤが指差す部分だけ、リボンがしみになってそこだけ色濃くなってしまった。
「俺が挿れていいんだよね? 誕生日だし」
指さされた部分を恥ずかしそうに凝視していたリョウは、アヤから言われてこくん、と頷いた。
「うん、だからもう、ほどい」
「このままで出来るんじゃない? ここだけほら、こうして」
すぐそばの引き出しからハサミを取り出すとリョウをころんと転がし、リボンの会陰部にハサミを入れ、臀部まで切り刻んだ。リボンははらりとはだけ、その部分だけ肌が露わになる。
「変態やな」
「今更だろ」
言い合うと、二人同時に笑いあった。
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