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さんざん啼かされイかされへとへとになって、ようやくリョウに巻かれたリボンが全て解かれた。リボンはもはやどちらものもかわからないいろいろな液体でしみだらけである。
「で、言いかけてたことって」
涼しい顔をして訊いてくるアヤを、本当にヤバいヤツだなとしみじみ思うリョウは、まだ息がぜいぜいと上がっているし身体の節々がキシキシと痛んでいる。
「ああ、あれは……」
冒頭、「リボンを巻いたままでは話が入ってこない」と中断された話をぽつりぽつりと話し出すリョウ。アヤは黙ってじっと聴き入っている。
「プレゼント何にしよかて考えた時に、趣味に関するモンがええんちゃうかって、ほんでアヤに趣味訊いたけどないて言われて、それで考えてん。アヤが一番楽しそうというか、いきいきと輝いてるときって何してるときなんやろって。ほんなら……」
「なら?」
「……まあ、なんちゅうかその、俺とえっちなことしてるときかなあ、って」
リョウがもごもごと恥じらいながらようやく告げた言葉に、それまで神妙な面持ちで話を聞いていたアヤはブフッと吹きだした。
「ひどいな」
「でもさっき見てて、俺の考えは間違ってなかったって確信持ってんけど?」
その辺に散らかったリボンを横目に、意地悪く口を尖らせアヤに詰め寄る。最中のアヤは普段のローテンションからは想像もつかないほどに荒々しくがっついてくる熱量といい、瞳の怪しい輝きといい、それはそれはいきいきと、夢中で、輝いていたものだ。
「間違いではない、かな」
そう言うとアヤはリョウを抱き寄せ、包み込むように抱きしめた。
「ほらやっぱり!」
抱きしめられながらもまだなおボヤいているリョウの唇に、そっとアヤは唇を重ねた。
「俺もあれから考えたんだよ、俺の趣味って何だろうって」
「え、そうなん? で、何やったん? 答え出た?」
顔を見るため身体を離そうとしてくるリョウを、もう一度強く掻き抱く。顔を見られたくないのだなと察したリョウは、大人しく次の言葉を待つことにする。
「――リョウ」
「ん?」
「俺の趣味」
「え?」
「だから、俺の趣味」
「ん、うんん、アヤの趣味は俺、ってこと?」
「……うん」
まだきつく抱きしめられたままでアヤの顔を見ることが出来ないが、かろうじて見える耳朶は真っ赤に染まっている。
「じゃあ正解やったんや、俺のプレゼント」
弾む声に、目に見えなくてもリョウが今どんな顔をしているかわかる。
「うん。毎年これでいいよ。ならもう悩むこともないだろ」
「え~。毎年リボンプレイすんの? 脚痺れて辛いんやけど」
そこでようやく二人は顔を見合わせ、リョウは愉快そうに、アヤは少し照れくさそうに笑い合った。
恋の寿命とかなんとか気に病んでいたっけな、とリョウは数日前のことを思い返した。そしてそれは全くの杞憂だったことをあらためて感じる。趣味が自分だなんて言ってくれる伴侶に対して、逆に失礼な悩みだったと反省するほどに。
それと同時に、サーフィン以外にももっと気軽に二人で夢中になれる趣味を見つけられたらいいな、と想いを巡らせた。
【おわり】
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