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「アヤ~晩ご飯たこ焼きしよ~」
うきうき顔でリョウがアヤにしなだれかかってくる。アヤはがっくりと肩を落としため息をついた。
「また? もういいよ」
一緒に住んでいるアヤとリョウは恋人……いや、人生の伴侶である。パートナーシップ宣言を行い、一緒に暮らしだしてもうすぐ二年になろうとしている、れっきとした夫夫なのだ。
「休みの日はたこ焼きに限るやろ。喋りながらゆっくり焼きもって、アヤは酒でも飲みながら、ハフハフ食べるの最高やん! アヤも好きやろ? 毎回生むほど食べるくせに」
「そういう問題じゃなくって……頻繁すぎるんだって。きっとみんなだって思ってるよ」
「みんなて誰よ。ほらほら、わけわからんこと言うてんと、アヤも切るの手伝って」
抗議をけんもほろろに却下され、アヤはなんとも言えない表情を浮かべながらも渡された包丁を持つ。それを見たリョウは大げさに天を仰ぎ、感慨深そうに言うのだ。
「しっかしアヤが料理のために包丁持つなんて想像もつかんかったなあ」
「料理目的以外でなら想像できたってこと?」
「アヤほんまツッコミに磨きかかってきたよな、素質あったんやな」
生まれも育ちも大阪のリョウと、関西に位置する和歌山に暮らすようになり、確かに語調やノリがつかめてきたような気がする。しかし妙な褒め方をされて、アヤはどういうリアクションを取っていいかわからない。
「今日はな、たこ焼きいうてもたこはないねん」
「は?」
たこ焼きなのにたこがないとは、それはもう焼きなのでは? などとアヤが考えている間にも、リョウは次々と冷蔵庫やパントリーから食材を出してテーブルに並べた。
「ウィンナーと、おもちと、ツナマヨと、焼き鳥缶をご用意! さらにはカスタードクリーム、あんこ、ペパーソース」
「ちょっと待って」
出汁のきいた生地にカスタードクリームやあんこというのもたいがいだというのに、ペパーソース。アヤもさすがに口を挟まずにはいられなかった。
「そう! 噂の『ロシアンルーレットたこ焼き』ィ!」
ロシアンルーレットたこ焼きとは、一つだけペパーソースを入れた激辛たこ焼きを作り、順番を決め一人ずつ食べていき、激辛たこ焼きを食べた人が罰ゲームをするというゲームである、が。
「二人でやってどうするんだよ」
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