そんなこんなで今夜もたこ焼き

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 そこそこ人数がいてこそ盛り上がるのであって、双方どちらかが当たるだなんて二人でトランプのババ抜きをするぐらい盛り上がらない。 「まあまあ。はよウィンナー切って。手がお留守やで」  ずっと手が止まっていたアヤをリョウが促した。 「結婚祝いにもろたたこ焼き器、早くも充分元取ったよなあ」  二人が挙式した際に、結婚祝いにと友人が贈ってくれた。持ってきてくれたときに一緒にたこパをして楽しんだものだ。 「週に一回は使ってない?」 「三週に二回ぐらいちゃう? ほらもう手慣れたもんや。アヤも上手なったよな。店出せるんちゃう……せや! 将来二人でたこ焼き屋やろっか!」  くるくると手際よくたこ焼きをひっくり返していると、出ましたいつものリョウの思いつき発言。 「……へぇ」  もう慣れた、とアヤは雑に流した。 「ほんならずぅっと一緒におれるやん、なあ! ちょっとちょっと、俺めっちゃええこと思いついたんちゃう?」 「やらないよ」  どや顔でぐいぐいと突っかかってくるリョウを心底鬱陶しく思いながらも、『ずっと一緒』は悪くないな。なんて、アヤはほんの少しだけ思った。 「そろそろ焼けて来たな、お皿に上げてこ」  よく焼けたものから順に皿に上げていき、焼きがまだのものをよく焼ける場所に移す。ソースやマヨネーズにポン酢、青のりに鰹節など、調味料やトッピングも準備万端である。  リョウがひとしきり焼き終え、次の生地を流し込み、待っている間にさて食べようと皿を見ると、ほとんどない。あんなに焼いたのに? 「あれ?」  アヤとリョウの視線が合う。アヤは顔の形が変わるぐらいに口いっぱい頬張り、もぐもぐと口を動かしている。 「ちょっと、アヤ……?」 「ん?」 「ん? やあれへんやろ! さっきから静かやと思たら……何ほとんど全部食うてんねんな」 「いや、目の前にあったら、ねえ」 「ねえ、やないっちゅうねん! もう、焼くの代わって! 俺まだほとんど食べてへんねんから」  ぷりぷりとまだ文句を言いながら、リョウはアヤにピックを手渡した。そして皿を自分の前に引き寄せると、幸せそうにたこ焼きを頬張った。一悶着の間にすっかりちょうど良い熱さになっていて、ぱくぱくと口に運んだ。 「……!!」  声にならない声を上げ、リョウが悶絶したのはその数分後。
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