222人が本棚に入れています
本棚に追加
リズム良くたこ焼きをひっくり返していたアヤはリョウの異変に気づき、慌てて声を掛ける。
「リョウ?」
「……がらい……ッ」
例のロシアンルーレットたこ焼きである。自分で入れておいて自分で引き当ててしまったらしい。五割の確率なのだから、致し方ない。
「ほんとに入れてたんだ」
アヤが呆れ顔で水を手渡すと、リョウはひったくるようにグラスを受け取り、一気に飲み干した。
「ひいいいいいえらい目に遭うたわああああ」
「自分でやったんだからね、それ」
涙目でむせ込んでいるリョウはどう見ても間抜けなのだが、伴侶フィルターといおうか、アヤの目にはまた別の映り方をしているようで。
「……罰ゲームって言ってたよね」
「え、言うてはないけど……」
「ロシアンルーレットたこ焼きって言ったら罰ゲームだよね」
「えっと、」
アヤには元来、好きな子にはつい意地悪したくなる的な性癖を持ち合わせている。庇護欲や加虐欲みたいなものがないまぜになって、『可愛いものを壊したい』というような衝動に駆られることがままあるのだ。
「今夜寝かさないけど、構わない?」
「構わない? って……どうせ強制やろ」
観念したようにリョウが肩を落とすと、アヤは満足そうににぃっと口端を上げた。
「ていうか罰ゲームも何も、それ普段通りやん……」
今宵も長い夜になりそうである。
【おわり】
最初のコメントを投稿しよう!