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ぐい、と肉をかき分け突き進めば、少しだけリョウの腰が上へと逃げる。律動がスムーズになったころ、そこらへんの元が何だかわからない汁を指に塗りたくり、再び鼠径部に這わせる。
「ひゃんっ」
また、犬がキャンと鳴くような声が飛び出した。予想通り、とても締まる。アヤはリョウに見えないように少し笑った。
奥を打ちつけながら鼠径部をいやらしく撫でさすられ、リョウは何が何だかわからない。くすぐったさと快感、どちらに身を委ねればいいのか、どちらにも身を委ねられなくて、どうになかってしまいそうだ。涙が出るほど笑っているけれど楽しいからではない。もっと感じたいのに、余計な感覚が邪魔をする。
「アヤ、も、やめて、息できひ、っ」
いつもより締まりが良すぎて、らしくもなくアヤは早くも絶頂の兆しを感じたが、こんなに早く終わってしまってはもったいない。一度果てたらもうこのプレイは絶対にさせてくれないだろう。そう思って、しばし中断してはまたくすぐりピストンを再開、そしてまた少し休んで……を繰り返した。
「アヤ。腹減った」
憮然たる声に起こされたのはまだ日が昇りきらない早朝。
「……?」
「なんか食わしてよ」
いつもなら先に勝手に何か食べているのに、どうしたのだろう、とアヤは疑問に思う。
「冷蔵庫の、何でも好きなの食べていいよ」
「だから持ってきてえな」
「そんなの自分で……」
「腰 立 た ん の や !」
歯を食いしばりながらリョウが恨めしそうに睨んで言う。
「ついでに言うたら腹筋筋肉痛すぎて動かれへん」
アヤは何も反論できず、すごすごと冷蔵庫へ向かい、昨夜買っておいたヨーグルトやサンドイッチを出してきてリョウに渡した。
「食べさして」
「そのぐらい自分で……」
「んもーーーどっこも動かされへんのーーー!」
わあわあと叫びながら最後はちゃっかりお口あーんで食べ物が入ってくるのを待つ。まるで鳥の雛のように。
「……承知いたしました」
ため息を吐いてアヤがスプーンでヨーグルトをすくい、リョウの口に入れた。
その日は一日、アヤはリョウの召し使いよろしくこき使われたわけだが、実は互いに内心それほど嫌でもなく、こんなのもたまには楽しいかも、なんて思っていたのは双方内緒の話。
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