花とわたし

2/9
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
どう見ても小学生が初めて編んだようには見えない。びっくりしてしばらく言葉が出なかったほどだ。海世ちゃんにそんな才能があったことも、毎日塾や習い事に忙しい海世ちゃんがいつの間にマフラーを作ったのかも、そのすべてが驚きだった。 この時わたしは、羨ましい気持ちと悔しいような気持ちがわっと押し寄せてくるのを感じた。それに自分で何かを編むということに今まで気付かなかったことにはっとしたのだ。 その日は一日中、自分も何かを編みたいということで頭がいっぱいだった。 家に帰るとおばあちゃんの部屋に飛んでいった。 「おばあちゃん、唯衣も編み物がしたい。あの赤いドレスが作りたい!」 おばあちゃんの部屋のタンスの上に飾られたフラメンコのお人形を指さして言う。 おばあちゃんは驚いた顔をしていたけれど、よいしょと立ち上がって、押し入れの中から毛糸の詰まった箱を持ってきてくれた。 「お人形さんの服を作るの?」 「唯衣が着るんだよ!」 おばあちゃんは困った顔で、赤い毛糸を取り出す。どうせ作るのならみんながあっと驚くような凄いのを作りたい。 「唯衣ちゃんが着られる服となると、毛糸がたくさん必要だわね。それに最初からドレスは大変だから、小さなもので練習しないとね」 「えー、ドレスを作りたいのに.......」 「手袋はどう? ミトンなら唯衣ちゃんにも編めると思うわ」 おばあちゃんは編み物の本をパラパラとめくって、可愛いミトンの写真を指さした。 「貸して!」     
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!