花とわたし

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まだ手首から親指の付け根くらいまでしか編めていない。それでもじっと手先だけに集中して、糸が外れてしまわないように気をつけながら編んでいく作業は思った以上に大変だった。見るのと自分がやるのでは大違いだ。 それに、一段ごとに編み目の大きさが変わってしまって全然綺麗じゃない。海世ちゃんのマフラーはそんなことはなかった。いったいどれくらい練習したんだろう。ピアノだってお習字だって、海世ちゃんはとても上手だ。テストだって毎回百点をとってるし、夏休みの宿題の絵は表彰状をもらっていた。 わたしには海世ちゃんに勝てるものは一つもない。 時々、ふとした瞬間に海世ちゃんと自分を比べてしまうことがあった。前まではそんなことは考えなかったのに。 学校が終わってみんなで一緒に遊ぶ時も、海世ちゃんは塾や習い事で来られないのをかわいそうだと思ってた。 でも最近はピアノが弾けたり、絵やお習字で賞状をもらったりする海世ちゃんが羨ましい。 海世ちゃんに勝ちたいってわけじゃないけど、わたしも海世ちゃんに凄いねって言われたかった。それが原動力になったのか、飽きっぽいわたしがその夜手袋の片手を完成させたのだった。 次の日も家に帰るとすぐに編み物に取り掛かった。 昨日より少し早く片手を編み終わった。     
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