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おばあちゃんの作ってくれた毛糸のシュシュが放り投げられた。
ちょっと好きだった男子に意地悪をされて、わたしは泣きそうになった。
その後こっそりと海世ちゃんに花の名前を確かめた。
ケイトウ。鶏の鶏冠に似ているから鶏頭というらしい。毛糸じゃなかった。
恥ずかしさにしばらく顔を上げられなかった。
赤い手袋も、フラメンコのお人形も当分見たくない。
おばあちゃんの編み物教室も二日で終わりだった。
「唯衣ちゃん、昨日の手袋、今日は履いてないの?」
次の日の朝、海世ちゃんがわたしの手を見て言った。
「う、うん。海世ちゃんみたいに上手じゃないし」
「え、結衣ちゃんが編んだの? 手袋なんて凄いね」
思いがけず、海世ちゃんから凄いねと言って貰えて、わたしは少し気分がよくなった。今思い返しても、わたしはとても単純だ。
さらに海世ちゃんは言った。
「このマフラー、実はほとんどお母さんが編み直したの。それもわたしが寝てる間にこっそり! 酷いでしょ?」
そう言いながらも毎日そのマフラーを着けているのだから、多分わたしを慰めてくれようとしたに違いない。
心までキレイな海世ちゃんに憧れずにはいられなかった。
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