蘇生案件:通り魔連続殺人犯

4/55
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/220ページ
「間違いないんすか?」  ああ、と河井は頷き「俺がこいつの顔を見間違うはずがない」と断言した。 「先輩、戻りましょう。こんな所に死体持って来ちゃいけない」  河井はかぶりを振った。 「何でです?」こんな所に死体を運んで来て「全然意味わからない!」 「俺は」河井が叫んだ。  そして絞り出すように言った。 「こいつだけは、絶対に許せない」  七年前、大友博史は通学途中の小学生の列を刃物で襲い、六人の児童を次々に刺した。近くにいた会社員の男性が子供達を助けようとして刺された。七人ともほとんど即死の状態だった。  近所に住んでいた非番の若い警官が、異変に気付いて現場に駆けつけ、一時犯人を取り押さえた。しかし、もみあいとなった際に腹部を刺されていた警官は、結局犯人に振りほどかれて、逃走を許してしまった。その後、犯人は逃走途中にも六人を襲い、その内四人が殺害された。  容疑者の身元はすぐに判明したが、その後七年が経過しても行方がつかめなかった。  警察史上稀にみる大失態として、世間から非難を浴びた…いや、今も非難を浴び続けている事件だ。  容疑者の大友に憎悪を感じない警察官は皆無といってもいい。  中でも特に河井は、以前から異常なほどの憎しみを、大友に対して抱いていた。 それは彼が七年前に大友を取り逃がした警官だったからだ。
/220ページ

最初のコメントを投稿しよう!