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「許せない気持ちは分かりますが、こんなことして何になるんですか?」
戻りましょう、と口にしかけた松宮は、河井の狂気をはらんだ形相に息を呑んだ。
「俺は、こいつに必ず罪を償わせると誓ったんだ」
鬼気迫るというより、悪魔にでも憑かれたかのようだった。
「先輩の気持ちは分かりますが、これは間違ってます。戻りましょう。戻って、ちゃんと報告して、決着をつけましょう」
河井の気迫にのまれないように、松宮は一息でいった。
「決着? 何の決着だ!」
「七年前の事件ですよ」
はあああ、と河井は大きく息を吐いた。溜め息とも嘲りとも思えるものだった。
「自殺なんて、勝手な真似されて、決着がつくか?」
「それは……」
「こいつは、まだ一言も謝ってない」
「そうですけど……」
「裁かれてもいない」
「そうですけど……」
「こいつは、十一人もの命を奪った」
…そうですけど…
「なのに、一言の謝罪もなく、裁かれもしないまま、自分勝手に死んで」
…そうですけど…
「それで終わりで許されるわけがない!」
「死んじゃってるんだから仕方ないじゃないですか!」
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