チョコ的な何かが欲しい僕の話でもしましょうか。

2/9
前へ
/9ページ
次へ
柏木優斗(かしわぎゆうと)は毎年、二月前になるとそわそわする。 特にショッピングモールなど行くと、お店の一角にチョコが積んであるのを見るとさらに動機がする。 バレンタイン、その文字が浮かぶ。 別に今までチョコをもらったことがないわけでもなく、トラウマがあるでもなく、チョコアレルギーでもない。 だがしかし、社会人になって勤続5年。 うちの会社はバレンタインの風習があり、女子社員は連盟で買った安いチョコをばらまいてくれる。 まあ、ないよりはいいかなと柏木は思う。 だが、柏木が毎年、チョコくれないかなと願ってやまないあの人は連盟に加盟すらしておらず、ましてや特定のだれかにチョコを贈ることもしたことがない。 柏木優斗より一歳年上の先輩、経理課の山際綾子。 山際さんは、とてもきれいなのに化粧っけもなく、いつもみんなを敵にまわすかのように、経理不備伝票を突き返す。 いつも何かと戦っており、柏木も苦手なタイプだった。 だった、というのは、とある違う側面を知ってしまってからはファンになった。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加