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彼女は会社ではもくもくと仕事をこなし、他人となれ合うこともしないが、本当は裁縫がとてもうまい。
それを知ったのはとあるイベント会場であった。
たまに地元へ戻ったとき、地方イベントで手作りグッズの販売イベントがあった。
地元野菜を売ってたり、民芸品を売っていたり、手作りアート作品、アクセサリー、またはパッチワークなど。
山際綾子はそこで、手作りの布製品を売っていた。かわいい犬の顔が縫い付けてあるキーケース、もこもこの携帯ケース、猫の形をした布バッグ、様々な模様のブックカバー、大小さまざまなポーチ。
ひとりで店番をしており、別に声をかけるでもなく、座って接待していた。
緊張しているのかもしれない。
物陰からひそかに観察しているとそう感じた。
お客さんが多いときにこっそり、ブースの隅にあった名刺をもらった。
ツイッターとインスタをもっており、商品もネット販売していた。
評価としてはそこそこのようだ。
柏木が思うに宣伝下手である。
更新頻度も少ない。
忙しいのかもしれないが、あれだけグッズがあるのだから、どうとでもなりそうなものだと思う。
もったいないなあと思ううち、声をかけようか迷う日々が続いた。
会社で観察していると、彼女は人が嫌がる仕事をしているのをよく見かけた。
後輩が面倒な取引先の電話問い合わせに四苦八苦しているのを見ていると電話を替わっていたし、食堂のテーブルで、誰かがこぼしていた水を布巾をもらって拭いていた。
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