チョコ的な何かが欲しい僕の話でもしましょうか。

6/9
前へ
/9ページ
次へ
「なるほど。あなたにチョコをあげるのは一種のステイタスみたいなものですね。すいません、メリットを感じません」 そう言って伝票入力に戻る。 今年は柏木も負けない。 「メリットがあればいいんだよね。僕、お金払うから」 「ええええ」 このええええ、は部長である。 わかっている、捨て身すぎる。お金払ってでも何か欲しいのだ。この時期はチョコという形で愛がもらえる。嘘かもしれないけれどもらえる時期なのだ。 いいじゃないか。 「本気ですか?」 「本気。千円払う。さらに上でもいいよ」 「どうして、お金払ってでも欲しいのですか」 「えーっと……」 好きだから。好きだから。じっと見つめられて顔が赤くなる。 言葉ができたらどんなにいいか。 本当は会話だけでも勇気がいる。 「僕は人から物をもらうのが好きなんだ」 「どんだけええええ」 この合いの手も部長である。 わかっている。どんだけ、男らしくないのだと。 わかっている、いいだろ今年はかなりの進歩だ。 それに貰えたら、ホワイトデーに物を贈れる。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加