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彼女は、自分のカバンから携帯を取り出した。
そして、インスタの画面を開いた。
コメント欄。
実は柏木は一度だけ「かわいいですね、欲しいです!」とコメントしたことがあった。
「これ、柏木さんですよね」
「えええええ」
いまのは部長ではない。心から柏木の驚きの声である。
気づかれていたのか。
アカウント名からバレないはずなのに。
「ご丁寧に、部長がラインのIDを柏木さんのを教えてくれました。IDがインスタと同じなんですね。アイコンも同じなんですね」
「め、面倒だからね、はは……」
恥ずかしい、部長、今回だけは恨み――。
「貰っていただき、ありがとうございます」
一度、今、山際綾子がほほ笑んだ。
あの笑わない、山際綾子が。固い表情のこの人が。
かわいい、好きだ。
無理。
部長、恨みません、グッジョブ!!
ついでにデート申し込みたいけど、今度は違う作戦でいくぞ。
山際さんが去っていくとうちの営業連中がどっと廊下になだれ込んできた。
漫画か。
それから、社内で評判の二人となった。
山際さんが迷惑でなければいい。
内緒にしたかったけれど、マフラーあからさまにしていたら仕方ないよね。
とにかく、お金払う関係からは脱却しなくちゃ。
いや、彼女にとってはお金払ってもらう関係が一番うれしいのかもしれないけれど。
山際さんの笑顔、もっと見たいからがんばるわ。
おわり。
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