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「おやおや、君たちはこんなところで何をしているのかな?」
先頭の男は両手で猟銃を持っている。後方の男たちも同様だ。
「真神ちゃん、こっちに来て」
危険と感じた雫は真神を急いで呼び戻す。そして真神は雫の元へ走り出そうとした。
「質問に答えてくれないなんて、悪い子たちだなっ」
だが男は猟銃で真神の後頭部を殴った。
「真神ちゃん!!」
雫は倒れた真神の元へと走っていく。
「こっちは知ってるんだ。お前たちがあの屋敷の子供たちだってことぐらいな」
男は続ける。
「こんな戦時中だってのに食料がたんまりあるそうじゃねーか。おじさんたちにちょっと分けてくれないか?」
男は不敵な笑みを浮かべながら銃口を真神へと向けた。
真神を助けるために雫は夢中で走り出す。
「真神ちゃん!逃げて!」
雫は叫んだ。だが真神は未だ地に伏せたまま起き上がらない。
「っち、頭が悪い奴らはこれだからいけねぇ。お前から死ね!」
男は雫へと銃口を向けると引き金を引いた。飛び出す銃弾は一直線に雫の心臓へと向かい、少女の胸に風穴を開けた。
「し……雫姉?」
顔を上げた真神は血を流しながら地に伏せる雫を見て顔を青ざめた。生まれてから2ヶ月ほどの新生物にも何が起きたかは理解できる。
「次はお前だが、紅夜とやらに財産を渡すように言えば命だけは助けてやるよ」
その男衆は武装した市民だった。箱根の山奥にある屋敷の噂を聞きつけて襲撃に来たのだ。
しかし真神は返事をしない。
「ん?何黙ってんだ?殺すぞ?」
男は引き金に指をかける。だが真神は男の顔を直視した。
「な、なんだその姿は?」
男は真神の姿を初めてまじまじと見た。そこには獣のような耳と尻尾、そして先ほどまではなかった鋭い牙や爪が生えていた。そしてふさふさとしていた尻尾はトゲのように逆立ち、彼女の目は充血して赤く染まっていた。
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