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「ぶっ殺してやる!」
男達が一斉に襲い掛かる。が、男は殴ろうとする拳や蹴り上げようとする足を全て交わした。まるで攻撃を読んでいるかのように洗練された動きだった。鉄パイプやナイフを振りかざす不良もいたがそれも掠めもしなかった。
数分後、辺りには気絶した不良の男達が倒れていた。華は唖然としていた。
―すごい…。あっという間に倒しちゃった。斎藤君ってこんなに喧嘩強かったんだ。
不意に雲に隠れていた月明りが地面を照らした。月明りに照らされた彼の横顔は美しく、幻想的だった。そして、彼の瞳は赤く光っていた。
「え…。」
血のように紅い瞳…。眼鏡をしていても月の光でその瞳ははっきりと目に映った。
「斎藤君。その眼…。」
華が口を開くが彼は顔色を変えると、目にも止まらぬ速さで華の目の前まで行き、華を地面に押し倒した。
「キャッ…!?」
彼は華の膝に触れた。見れば、膝からは血が滲んでいた。さっき転んだ時に擦りむいたのかもしれない。華は斎藤の様子がおかしいことに気づいた。目がギラギラと赤く光り、息遣いも荒くまるで餌を前にした獣の様だった。そして、その口元から覗く鋭く尖った牙が月の光に反射して凶器のように光った。
「ヒッ…!?」
悲鳴を上げかける華だったがそれより、早くに彼が膝から流れる血に舌を這わせた。ピチャリ、と音を立てて赤い舌が血を舐めとっていく。
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