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「や、斎藤君!何を…!ん!」
起き上がって止めようとするが彼に口を塞がれ、そのまま再度地面に押し倒された。彼は押し倒した華を見下ろす。
「んー!んー!」
口を塞がれたままで声が出ない。いつの間にか眼鏡は外されており、黒髪の隙間から覗く赤い瞳に華は恐怖を感じた。そのまま華の首元に唇を寄せ、チュッと口づけをした。そして、次の瞬間、グワッと口を開くと白い首筋に牙を突き立てた。
「あっ…!ああ…!」
牙を突き立てられ、じゅる、じゅると音を立てて血を啜られる。びくん、と体が震え、噛まれた所が痛みと熱を感じる。
「やめ…、て…。」
抵抗する手は弱弱しく彼の肩を掴むだけで押し返すことはできない。はあ…、と息を吐くようにして一度首筋から口を離した彼の口元は真っ赤な血で染まっていた。満月に照らされた彼はぞくりとした色気と妖艶を感じる。そのまま今度は華の服に手をかけて引き裂くと、胸元に牙を突き立てた。
「やっ…!ッ…!」
身体が熱く、思うように動かない。痛みと熱だけではない。もっと別の何かが身体を駆け巡っていた。
―何、これ…?身体が…、
ビクビクと体を震わせる華の反応にクッと口元を歪めて彼は笑った。そのまま血を啜り続ける。ハア、と息を吐き、涙目になった華は抵抗できずに彼に血を吸われるままだ。彼の肩越しに見上げた先には赤い満月が浮かび上がっていた。
―これは、夢…?だって、こんなのおかしい。これではまるで…、空想上の世界に出てくる吸血鬼そのもの…。
そのまま華は気を失った。
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