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彼が来た。彼の姿を見かけた華は胸が高鳴った。本を読む振りを装いながらも彼をチラリと観察する。
―ああ…。今日もかっこいいなあ。
胸がドキドキする。華がいつも図書館に通い詰めているのは本の為ではなくて、彼に会うためだった。不純かもしれないが彼を遠目に眺めるだけで華は幸せだった。無造作に伸ばされた黒髪もワイルドで素敵だ。黒縁の眼鏡も知的な印象を与える。白い肌は滑らかそうで肌触りも良さそうだ。細長い指でありながら大きな手、スラリとした長身、俯きがちに歩く姿も謙虚さを感じさせる。
「はあ…。幸せだった…。今日も一日頑張れる…。」
うっとりと赤くなった頬を押さえながら夢見心地の華は昼休みに友人に今日会ったことを話した。
「あんたも毎度毎度飽きないわね…。大体、斎藤なんかのどこがいい訳?」
呆れたように友人は華のいつもの惚気話を聞いていた。
「ひどい!斎藤君みたいに素敵な男の人なんていないよ。鈴ちゃんは男見る目がなさすぎる!」
「あんたに言われたかないわよ。」
「鈴の言う通り。だって、斎藤ってパッとしないし、地味で根暗だし、おまけに無愛想。男としての魅力何てないじゃん?あいつのいい所なんて、勉強ができる事位よ。」
「友ちゃんまで…。斎藤君はとっても優しいし、努力家だし、他の人がやりたがらない仕事を率先してやろうとする真面目な人なのに!」
「単純に面倒ごとを押し付けられているだけだから。あいつ、押しに弱そうだからねー。」
華にとっては理想のタイプなのだが友人には評価が悪かった。だから、華は友人からは物好きだと言われている。
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