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確かに彼は影が薄く、あまり目立たないタイプだ。
―でも、本当にとってもかっこいいのに…。どうして、皆気づかないのかなあ。あ。でも、よく考えたらライバルがいないんだから今がチャンスかも!
華はそう前向きに考えた。彼の魅力にきづかれない内に仲良くなりたい。未だに話したこともないけれど。その現実に華はシュン、と落ち込んでしまう。
彼が好きになったきっかけは些細な出来事だった。大学に入って友達もでき、勉強もサークルも充実していた頃、レポートの資料集めのために図書館で彼を見かけた。初めは気にも留めていなかった。でも、ある時、派手なグループの男女が騒がしくて気が散って集中できないなあと思いつつ何も言えなかった華だったが窓際で静かに本を読んでいた彼がそのリーダー格の男子に注意をしたのだ。背は高いが線は細く、いかにも弱弱しそうで喧嘩をしたこともなさそうな彼が堂々と意見したことに華は驚いた。それからだ。彼が気になりだしたのは。いつも窓際で本を読んでいることや頬杖をついて熱心に本を読む姿、窓から夕焼けの光が彼の顔を照らすと幻想的で美しさすら感じる。気付けば目が離せなくなっていた。いつの間にか華は彼に恋をしていた。
―何とか…、友達になれないかなあ…。
そんな思いで華は次の講義が始まるまでの間、席についてはあ、と溜息を吐いた。
「隣、いい?」
「あ、どうぞ…。!?」
華は隣に座ろうとする学生を見上げて目を見開いた。目の前に立っていたのは憧れの彼、斎藤千秋だった。
―ど、どうしよう!と、とりあえず、自然に。そう!自然に話しかけて!
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