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「あ、あの…、」
が、話しかけようとした瞬間、講義が始まってしまった。隣に彼がいるせいでその日の講義は頭に入らなかった。
―ああー!もう!あたしのバカバカ!せっかくのチャンスだったのにー!
あの後、講義が終わると彼はさっさと立ち去ってしまい、話しかけることすらできなかった。華は今日講義で習った復習をするために図書館で手に入れた本を抱えて階段を歩いていた。
「だからさあ…、ちょっとだけ貸してくれるだけでいいんだって。」
華は不意に数人のガラの悪そうな不良が一人に絡んでいるのを見つけた。
―え…、もしかして、カツアゲ?ど、どうしよう。せ、先生に…。
華は教師を呼ぼうと教員室に向かおうとする。すると、絡まれている生徒の顔が視界に映った。
―え!斎藤君?
それは華の好きな彼だった。中々、金を出さない彼に痺れを切らした不良が彼の胸ぐらを掴んだ。華は深く息を吸い込んだ。そして、声を上げた。
「先生―!早く、こっちです!こっちの方で争う声がして…、」
「ゲッ!?先公?」
「チッ!」
不良達は慌ててその場を去っていった。ホッとする華はその場に座り込んでしまう。
「大丈夫?」
緊張のせいかまだ震えている華にいつの間にか近づいていた斎藤は手を差し出した。
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