空戦前夜

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 休憩中のサナに、何の気なしに尋ねたことがある。 「うーん」  サナが考えている様子をじっと眺めた。人喰い昆虫もいない、同僚や家族が死んでいったりしない、平和な世界だったら。  しばらくして彼女は答えた。 「アイスクリームが食べたい。おなかいっぱい」 「……」  本当に、変な子だなと思った。 『先頭部隊、位置についてください』  今日も司令塔からアナウンスが流れる。  開き始めるゲート。視界一杯に入ってくる街中の巨大な虫。  固い金属製の全身スーツに頭まで覆われた俺たちは、ガチャリと銃を構える。 「秋篠さん」  突然、隣でかぽっとヘルメットを外したサナに俺はぎょっとした。もうすぐ部隊が発進するというのにそれは危険な行為すぎる。  サナは丸い瞳で俺を見て言った。 「わたしのこと、まだ、好きですか」 「え」  サナと出会ってから、三年が経っていた。  許嫁のことは、正直よく知らない。よく知らないけど、サナがそいつといつか結婚するんだってことはわかっていた。  それでもずっと俺は、三年間ずっと、サナのことが好きだった。 (一度もそんなこと、言ってないのに)  俺が呆然としているうちに、『部隊発進まで、10、9……』というアナウンスが無情にも流れ始める。 『8、7、6……』     
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