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空戦前夜
巨大化した人喰い昆虫の脅威に世界が晒されてから、三年が経った。
人類の人口は半分まで減少、遺伝子に異常をきたした昆虫たちに都市ごと食い荒らされて、人が瞬く間に消える。
俺は高校卒業と同時に昆虫駆除部隊に就いた。駆除部隊とか言ってるけどそこでの日々は散々で、毎日毎日同僚が頭から吹き飛び市民は守れず上司は死んでいき、正直ただの地獄だ。
それでも、俺にはどうしてもそこに居続けなければならない理由があった。
俺と同い年の、同期の女子の名をサナという。
サナは今年で21になる。
彼女には許嫁の男がいた。彼女は本当は、今年その許嫁と結婚するはずだった。
21で結婚とかはえーなと思っていたが、先日とある知らせを聞いた。
許嫁の彼が、今から数か月前に死んでいたらしい。
自宅ごと、虫に喰われて。
人づてに聞いた話だったが、今の世の中じゃよくある、ありふれたことだった。
サナは初めて会ったときからずっと無表情だった。
淡々と任務をこなし、銃で虫を撃ち殺していく。
許嫁が生きてた頃と死んだあとで、彼女は何も変わらなかった。
「もし別の時代に生まれてこれたなら、何がしたい?」
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