Invitation Syndrome

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[一]  日本標準時間2030年7月15日午前0時00分。  日本は、侵略されたらしい。  時計は朝七時を指していて、僕は寝坊して起きたばかりで。  天気を見ようと点けたテレビ画面に映し出されたのは、瓦礫と化した国会議事堂。それを見て固まった。テレビから流れ出るサイレン、喧騒、それら全ての情報が嘘のようで、現実だと信じたくない。しかし、こんな胸糞悪いドッキリなんてあり得るはずはなくて。幾ら僕がこれを現実ではないと言ったところで変わりはしないのは明白だった。  ――一度、落ち着こう。  大きく息を吸い、吐く。  ニュースは未だ画面を変えていなくて、新たな情報は得られていない。侵略とは誰によってなのか、避難するべきなのか、これから人々はどうなるのか。何も疑問が解決していない今、棒立ちで居ても非合理的なだけだ。  もし避難をしろと言われてもいいように、準備をしているべきだろう。  寝間着から、何も考えずに高校の制服に着替える。まだ数ヶ月しか腕を通していない、この夏服には未だ着られている感が拭えない。制服のリボンを適当に洗面所で整えていたところで、普段滅多に鳴らないインターホンが鳴った。  洗面所を出て、インターホンを確認する。  小さな画面の中には、よく知った茶髪の男が制服を着て立っていた。何故コイツが此処に居るのかは知らないが、取り敢えず入れてやるべきだろう。  そう判断して、玄関の扉を開いた。 「やあ、夕園。気分はどう?」 「結衣原。最悪だよ」  挨拶を交わし合い、結衣原を中に入れる。自室に招き入れると、点けっぱなしのテレビから新しいニュースが聞こえてきた。 『――防犯カメラの映像によると、犯人は小柄女性の様子。科学的には説明のつかない謎の力を用いて国会議事堂の他、東京タワーやスカイツリーなどシンボルを選んで破壊した様子です。その為、侵略目的ではないかと言われており……』  真夜中で殆ど暗闇の映像が画面には映っていた。監視カメラだと思われるその映像自体も何処かが壊れているのか画質が荒い。  辛うじて人と判別出来る影が中央に映っていて、周りのものと比べると小柄な気もする。だが、これだけで女と決め付けるのも早計な気がするな……。  それこそ、目の前に居る結衣原だって背の高い部類じゃないから暗くて女装でもすれば同じ様に見えるかもしれない。
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