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「陸―。お友達がいらっしゃたわよ。降りて来なさーい」と、お母さんが二階の陸くんを
呼ぶ。
ちょっとの間があって、階段から陸くんが降りてきた。露骨に嫌そうな顔をしている。
「どうして、ここが分かったの?」
挨拶も無しに陸くんが話を始める。その様子を見て、陸くんのお母さんがビックリした
顔になる。
「歩いて探してたの。そしたら、白いカラスを見つけて……。後を追って来たら……」
「なるほど。それはご苦労な事で。だけど、天野さんが来た理由は想像がつく。そして、
僕には何も話す事は無い。以上」
そう言い残して、陸くんは私に背を向け、二階に上がっていく。
「陸。なんてこと言うの、お客様に失礼よ。陸、戻ってらっしゃい。陸」
お母さんが、大慌てで陸くんの後を追って、二階に上がる。
二階で陸くん親子の間で悶着が続く。
ややあって、お母さんが、すまなそうな顔をして降りて来た。
「ごめんなさいねぇ。あの子、今は誰にも会いたくないって……」
「そうですか……」
「ホントにごめんなさいね。いつもは、あんな子じゃないんですけど。あの、何か言伝が
あるなら、伝えておきましょうか」
「いえ。あの。また、来ます。今日は、突然お邪魔して、申し訳ありませんでした。失礼
します」
そう挨拶して、佐藤家を辞した。
また来ます。
そう言ってみたけれど、私には陸くんを呼び戻す、何のアイデアも持っていなかった。
嗚呼、私はどうしたら良いんだ?
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