第六章 試練と光明

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 翌日から、陸くんがソラシドレスキューに復帰した。  その日の最初の救助活動で、救助要請窓口を『ソラシドレスキューを応援する』スレに 一本化する旨のビラ告知をした。その事がマスコミに取り上げられて、翌日からは私達の思惑通り、救助要請が件のスレに寄せられるようになった。  救助要請の相互検証に理解を示してくれる協力者も現れて、私達は安心して救助活動に 集中出来るようになった。  その集中の賜物なのか、私もだんだん超能力の使い方が上手になってきた。  倒れた重機、脱線した電車、座礁した船、今までより大きな物が動かせるようになり、 お陰で救助活動の幅が広がった。全てが、良い方向に進んでいる。  *****  良い事と言えば、他にも喜ばしい事がある。  私の、あるいは私達のと言うべきか。超能力に進化の兆しが現れたのだ。  それは微妙な変化であって、本当に進化と呼べる代物なのか、分からない。  でも、私達はそれを確実に感じ取っている。  進化の一つは、テレパシーだ。  私は、言葉を交わさずとも、陸くんが何を考えているかが、何となく分かる。陸くんの 方も、私の考えを感じ取っているようだ。  読み取れるといっても、心の機微まで詳細に分かる訳ではない。相手が次に何をしたい かが、何となく分かる程度だ。所謂、阿吽の呼吸というやつだ。  ただし、この力が使えるのは、私と陸くんが接触している時だけ。  体と体が直接触れ合っているときだけ、お互いの心を感じ合える。  だから、正確にはテレパシーではなく、サイコメトリーの一種かもしれない。  ※サイコメトリー:触れた物体に込められた人の記憶・感情を読み取る能力
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