第六章 試練と光明

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 八月も半ばを過ぎ、夏休みも残り僅かになって来た。  新学期になったら、どうやってソラシドレスキューの活動を続けて行こうか?  そんな話題が、私達の間で語られ始めた頃だった。 『ソラシドレスキューを応援する』スレに、次のような救助要請が投稿された。  トレッキング中に女性が滑落して骨折。ドクターヘリで移送中に問題が発生して学校の 校庭に緊急着陸した。至急の応援求む。  という内容。  学校へのヘリ緊急着陸を報告する投稿が複数あり、信頼できる情報の可能性が高い。  同じ時期に、倒木除去の出動要請もあった。こちらは肯定する情報と否定する情報が、 ほぼ半々の状況。  普通ならば、トレッキング事故の救助要請を受けるのが、妥当な判断だ。  ところが、ここで陸くんが首を傾げた。 「トレッキング事故の方だけど、肯定投稿が異様に多いね? 投稿時間も集中してるし、 内容も同じ文面ばかり。そのくせ、元の事故そのものの報告は無い……」 「そういえば、そうね」 「倒木除去の方も、肯定と否定が半々ってのは、珍しいよね。偽情報の時は、ほとんどが 否定の投稿になるんだけどなぁ」 「トレッキング事故の件が、疑わしいってこと?」 「……うーん。なんとも言えない……」 「じゃぁ、もう一件の方にする?」 「うーん……。トレッキングの方は、学校に着陸したヘリの写真が投稿されてるしなぁ」  悩む陸くん。 「じゃぁ、こうすれば」私達の逡巡を見かねて、アッキーが助け船をだす。 「トレッキングの方は場所が近いから、こっちから先に片付ける。それが終わってから、 倒木除去の方に向かう。倒木の方は、俺らでなくても対応が出来そうだし、大至急の案件 でもないだろうから」  アッキーの発案で、トレッキング事故、倒木除去、の順で対応する手筈に決まった。  早速、地図で場所を確かめ、いざ出発。  けれど、私達を待ち受けていたのは、救助とは全く掛け離れたものだったのである。
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