第六章 試練と光明

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 10分ほど飛ぶと目的地が近づいてきた。三方を山に囲まれた窪地だ。あちらに三軒、 こちらに二軒といった具合に、集落が点在している。  2時の方向に学校らしきものが見えてきた。高度を下げて接近する。  校庭に、大きな何かがある。故障したヘリだろうか。  更に高度を下げる。  校庭にあるのは、飛行機だった。主翼両端に、巨大なローターが取り付けられている。 「あれは、ヘリじゃないね」と陸くん。 「あれは、垂直に離着陸出来るヘリプレーンだ。あんなドクターヘリ初めて見たよ」  その飛行機を目標に降下する。  校庭で私達に手を振る男性の姿が見えた。  その人の側に着地。 「怪我をされた方は?」 「こちらです」  男性が先に立って、校舎の方に走る。陸くんと私がそれに続く。  キュィ―――ン、コォ――――――、ゴォ―――――――――。  私達が走り出すのと同時に、後方から聞きなれぬ機械音が聞こえ始めた。  後ろを振り向くと、飛行機の翼端のエンジンが陽炎を吐き出し、ローターがゆっくりと 回転を始めた。  あれ? あのヘリプレーン、故障してたんじゃ? それとも、修理完了したのかな?  ローターの回転が早まる。エンジンの音が高くなる。  こっちです。先ほどの男性に呼ばれ、慌てて振り向く。  気を取り直して、男性に続いて走る。  校舎の角を曲がった場所に、人を乗せたストレッチャーがあり、周囲に救急隊員らしき 人が集まっていた。私たちの到来で、その人たちが道を開ける。  ストレッチャーに乗っているのは、30才前後の女性だった。どこか痛むのだろうか、 苦しそうな表情をしている。 「大丈夫ですか」と顔を覗きこむ。
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