第六章 試練と光明

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 スピードを上げる。追手もスピードを上げる。  急上昇。急下降。右旋回、左旋回。  ヘリプレーンは的確に追従してくる。振り切れない。 「どうして、追って来れるんだろ。ステルス飛行で、私達は見えてない筈なのに」 「きっと、レーダー装備なんだ。このままだと、僕らの生活拠点までついて来てしまう」 「どうすれば……」 「地形を利用して振り切ろう。しっかり掴まって」  それまでは、飛行中は陸くんの腰に軽く手を添えている程度だった。  掴まってと言われたので、陸くんの腰に手を回し、後ろから抱き着くようにする。 「もっと、しっかり掴まって」  そう言われて、陸くんを後ろから抱きしめる。  うっ。陸くんの背中に、胸が当たってるかも……。なんだか、恥ずかしい。  って、そんなこと言ってられない。 「降下する」  その言葉も終わらぬうち、急降下が始まる。  私の口から、悲鳴が飛び出す。 「ウウウゥゥゥ――――――――――――アアアァァァ――――――――――――――― ――――――――心臓が口から飛び出しそうだァァァ―――――――――――――――― ――――そいえばァァァ――――――――大変な事を思い出したァァァ―――――――― ―私はァァァ――――――――――――――――こんな―――絶叫系がァァァ――――― ――大嫌いだったんだァァァ――――――――――――――――――――――――――― ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」  恐怖のあまり、目を瞑る。でも、心臓が持っていかれそうな無重力感は収まらない。  いつまで、続くのこれ――――――――――――――――――――――――。
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